【プランニング編】鉄路でユーラシア大陸横断〜二十三日間世界一周〜

旅行記

「卒業旅行、シベリア鉄道なんかどう?」

「いいねぇ〜」

往々にして旅行計画の始まりなんてものはこんな何気ない一言からだ。
いや、唐突にシベリア鉄道が出てくるあたり何気なくないかもしれないが、それは置いておこう。

こんな会話してから約2年後、我々は車上の人となったのである。

このサイトを開いた目的である、僕と友人が鉄道でユーラシア大陸を横断した旅のその準備から実行までの全容を数回に分けてご紹介したい。

※ 旅に出た2020年3月といえばコロナがその勢力を伸ばし始めた時期であり、旅行中にその影響を強く受けてしまって旅程の変更を余儀なくされたが、その次第は今後の旅行記を御覧いただきたい。

経緯

まずは経緯だが、上に書いた通り決行から2年前のとある会話がその発端だ。

その時はまだそこまで本気ではなく、大学院の修士課程の卒業旅行に海外もいいかなくらいの心持ちではあったが、段々と卒業が視野に入ってくるとこの軽い一言がやにわに現実味を帯びてきたのであった。

こんなクレイジーな旅の同行者はコミ君だ。彼を含め中学高校の友人達とJourneysという旅行グループを結成して中学3年生の頃から旅に繰り出しているが、彼とは四国八十八ヶ所巡りをしたりとハードな旅を共にしている心強い仲間である。

修士論文の提出と発表は2月中なので必然的に旅程は3月となる。普段の国内旅行計画なら数週間前、なんなら数日前であっても予約や準備は余裕だが、そこは未知のシベリア鉄道。5ヶ月前からその計画は始動した。

旅の計画本始動

当初のプランではウラジオストクからモスクワまでシベリア鉄道全乗車を成し遂げよう! という計画で、
ウラジオストクまではどう行こう? 飛行機じゃなくて境港からフェリーも出ているのか。これもいいな etc…
という健全(?)なロシア満喫旅行の予定だったが、そこは水曜どうでしょう好きで沢木耕太郎の深夜特急を愛読している我々、

「折角ユーラシア大陸の東の果てウラジオストクから旅を始めるなら、逆に西の果てポルトガルはリスボンのロカ岬まで行くべきではないか!?」
(※ちなみに正確にはユーラシア大陸の最東端はデジネフ岬という場所である)

という話になるまで時間はさほどかからなかった。更には、

「もうリスボンまで来たら大西洋のすぐ向こうはアメリカ大陸だし、リスボンから東廻りで日本へ帰るよりアメリカを経由すれば実質世界一周になるんじゃね!?」

と気づいたのはある意味必然であろう。

北半球一周計画の全容

最終的には見事に世界一周を二十三日間で巡る、ジュール・ヴェルヌもビックリな計画と相成ったのである。

旅の計画

旅程

その練りに練った自慢の旅程がこちら、

基本的に1日1都市という国内旅行でもハードなスケジュールを体現

全10カ国、23日間に及ぶ長大な計画である。

“夜行列車”の文字にお気づきだろうか?
シベリア鉄道ももちろん夜行列車であり実はこの23日間中10泊が電車泊なのだ。特に11日にモスクワを出発してからミラノの宿に泊まるまでは連続3泊の車中泊で、それの厳しいところはシベリア鉄道のようにただぼんやり乗っているだけではなく、モスクワ・ワルシャワ・ウィーン・ミラノを全力で観光していることである。

これだけ長い海外旅行をプランニングしていると予期せぬハプニングが起きることも想定しなければならなくなる。普通の国内旅行の計画でも各観光スポットで数十分程度のバッファーを設けるとは思うが、今回は更に安全率を上げるためにミラノ・マルセイユ・リスボン・ニューヨークにおける滞在時間を長めに設定しており、万が一何かあった場合でも旅を続けられるように計画している。

そもそも折角海外旅行に行くのにも関わらず各都市にほぼ1日しか居られないというのはなかなかもったいないと思われるかもしれない。いや実際に僕も甚だそう思うのだが、【陸路でユーラシア大陸横断・世界一周の魅力】には抗えまい。

予算

さて、ここで気になるところなのがその予算だろう。

ざっと概算すると一人あたり約45万円だ。

それを高いと見るか安いと見るかは判断の分かれるところだろうが、下手なツアーで行った場合にはもっと短い海外旅行でもそのくらいには達してしまうだろうし、僕の素直な感想としては23日間の旅で約4万キロ近く移動して45万円なら十分安いんじゃないかと思う。

予算の内訳がこちらである。ちなみにこれは実行前の計画時のものであり、旅程の大幅な変更に伴い実際の金額とは異なっている。実際に掛かった金額については【まとめ編】を御覧いただきたい。

こうしてみるとほとんどが移動手段の費用だよなぁ

飛行機・列車・宿の予約方法

行きあたりばったりの旅の楽しさももちろん十分に分かる。分かるがそれはある程度旅慣れた場合においてだけ。今回はそんなことを言ってはいられない。綿密には綿密を重ねた計画のもとに実行してこそ、ある程度のサプライズが得られるのである。

そんな準備において必要なのが移動手段・宿泊先の手配に他ならない。
旅行会社のパック旅行を選択するのも一つの手であるが、計画の自由度や料金を考慮すると個人手配がおすすめだ。まあ、今回の場合は流石にこんなパック旅行は存在しないだろうから必然的にすべて自分で予約する必要があるのだが。。。

そう言うと少し難しく感じるかもしれないが、実際はある程度の英語とGoogle翻訳さえあれば十分に予約サイトの意味を捉えることはできる。支払い方法もクレジットカードが有れば十分なので、予約をする分には国内の予約とほぼ変わらないだろう。

まずは飛行機の予約方法から説明しよう。

飛行機の予約方法

フライトの検索サイトとして優秀なのがSkyscannerだが、ここでは国内便国際便問わずあらゆる空港間のフライトを探し出し、料金や時間の比較までいっぺんに出来る。

Skyscannerの検索画面(近隣の空港も検索に入れるのがなかなか便利)

しかし、このサイトでは時間や料金の比較だけにとどめて実際に予約する場合には基本的に航空会社の公式サイトで予約することをオススメする。

今回の旅行で必要な飛行機の予約は、
 成田→ウラジオストク間、リスボン→ニューヨーク間、ニューヨーク→台北→成田間
の3路線である。

成田→ウラジオストク(NRT→VVO)

成田発でウラジオストク行きの便はAEROFLOTを用いた。というかあまり迷う余地はなかった。日本に一番近いヨーロッパと言われるウラジオストクだが、意外にもアクセスはそれほど良くなく先述の通り境港からの船便とこの成田発の航空機以外には厳しい。
ウラジオストクの空港コードはVladivostokという綴りから”VVO”なので覚えておこう。

ウラジオストク行きの飛行機

この際、2人で乗る場合に微妙に安くなる裏技を発見した。
実は預け荷物を利用するとき2人でそれぞれ1個ずつ預けるよりも、1人が2個分預けた方が安くなるのである。今もその料金設定かは分からないが一考して見る余地はあるだろう。

ちなみに一人あたりの料金は33,700円。下手な国内便より安いので、コロナが落ち着いた後は東洋のヨーロッパに行ってみたもよいのでは?

リスボン→ニューヨーク(LIS→JFK)

次なる飛行機は打って変わってロシアのユーラシア大陸の最西端リスボンからアメリカ大陸への便である。

この区間の飛行機はあまり聞き馴染みのないAIR PORTUGALという航空会社だ。

ニューヨークにほど近い空港はJFK、LGA、EWRの3箇所あるが、リスボンから飛んでいるのはJFKくらいしか選択肢がなかったように思う。

この予約サイトもさほど難しいものではないので、落ち着いて予約をしよう。

ニューヨーク→台北→成田(JFK→TPE→NRT)

最後となる帰国便は何故か直行便ではなく台北を経由する。この理由の90%は料金で、直行便よりこの台北を経由するChina Airlinesの方がお安かったのである。また台湾でも7時間ほどトランジット時間があるため、多少台湾で朝食でも取れるのではないかという打算も含まれている。

それぞれの区間の所要時間は、ニューヨーク→台北が16時間20分、台北→成田間が3時間。
合計19時間20分の長丁場となるが、シベリア鉄道で鍛えられた我々に死角はないだろう。

列車の予約方法

列車の予約は飛行機よりも多少難しいので注意しよう。

その理由として考えられるのはやはり利用対象者の違いだと思う。国際便がスタンダートな飛行機では予約サイトも世界中の万人に理解しやすいように作られているが、今回利用したいシベリア鉄道を始めとした列車は、国家間を結ぶ国際線であっても陸続きの国々では国内線の延長のようで、各国のオリジナリティあふれる多種多様のサイトと相成っている。

シベリア鉄道(ウラジオストク→イルクーツク→モスクワ)

ウラジオストクで出発前に撮影したシベリア鉄道

シベリア鉄道にはウラジオストク→イルクーツク、イルクーツク→モスクワの2回乗車し完走となったが、1回イルクーツクで下車したのには2つ理由がある。

1つ目は、イルクーツクで世界一深い湖のバイカル湖を見るため。
2つ目は、シベリア鉄道にはシャワーがないから。

流石にウラジオストクからモスクワまでの一週間風呂なしというのは日本人としては許されないだろうという想いに駆られて、イルクーツクで途中下車してお風呂ついでに観光もしようということになったのだ。

さて話が少しずれてしまったが、シベリア鉄道の予約には2種類の方法がある。アカウント作成や予約方法についての詳細は様々なサイトで紹介されているのでここでは割愛するが、ロシア鉄道公式のRZDと代理予約サイトのRussianRailways.comのどちらの方法でも難易度はさほど変わらない。

よくRussianRailways.comの方が英語でわかりやすいというサイトも見受けられるが、僕の比較した範囲ではRZDも十分に良いUIなので、多少お安いRZDの方がいいかもしれない。

予約する際に決めておくべきことは日程と座席のクラスだが、シベリア鉄道は出発日の3ヶ月前からの予約が可能なので、出発の日程が決まったら3ヶ月前のその日に予約するのが確実だろう。

クラスについては1等車、2等車、3等車の3つから選べる。ここで違うのは部屋の専有面積の広さだ。

1等車では2人部屋でありかなり広く場所を専有することが出来るが、万が一同室になったロシア人が仏頂面で全くもってコミュニケーションが取れない相手だとかなり厳しい旅になること請け合いである。恋人や友人と2人旅であれば1等車で楽しく過ごすというのはいい考えかもしれない。ただもちろんお値段はそれなりにする。

2等車は4人一部屋で2段ベッドが2つあるイメージである。僕たちも4人部屋を選び、恐らくほとんどのシベリア鉄道旅行体験記ではこのクラスを選んでいるだろう。

2等車の室内。正面上部はテレビではなく鏡。

その理由は値段と旅情と快適さだ。
まず値段は3等車ほど安くはないものの飛躍的に高くなるわけでもなく、46,000円ほどでウラジオストクからモスクワまで9000km以上を寝ながらにして移動できる。
そして折角シベリア鉄道に乗るのだから少しくらいロシア人と交流したいという気持ちもあるかもしれない。その場合も4人部屋はかなりいい感じだ。部屋の中に3人のロシア人がいれば、英語が話せる人もフレンドリーな人もいる確率がぐんと上がり、楽しい旅を送れるかもしれない。
我々は2人で行ったため、その部屋の中は日本人率50%、ロシア人率50%。かなりバランスが取れている割合だ。

最後の3等車は日本人なら選ばない方が無難と思われる。

3等車の室内というか車内全体が1つの空間。

2人→4人と来れば分かるだろうが、そう6人部屋(?)なのである。
普通は通路となる部分(写真左側)にも二段ベッドが備え付けられ、かなりの”密”な状況だ。
当然ながらあるべき扉など存在せず、6人部屋とは名ばかりの大部屋然とした空間で、プライバシーやプライベートなどという言葉とは無縁の空間となっている。
ちなみに、国内の寝台列車やフェリーで見受けられるカーテンなども無いため完全なる曝け出しを余儀なくされる。

最後に二段ベッドの上段と下段どちらを選ぶべきか問題が存在するのにお気づきだろうか?

2人旅行なら交代交代にするのが普通だろう(我々もイルクーツクまでとイルクーツクからで上下交代した)。もし1人旅行の場合はどうするか。これは悩ましい問題だ。

夜以外の時間帯、上段の乗客は下段のソファーベッドに座るのも一般的なようなので、下段を選択した場合は知らないロシア人と昼間はずっと隣り合わせという可能性がある。
一方、上段を選んだ場合は昼間の時間帯ずっと上段にいれば良いが、普通は下に降りてくるだろう。その時、もし下段のロシア人が横になっていた場合は何とかコミュニケーションして、座る場所を空けてもらったりしなければならない。
また、机とコンセントも下段の窓際にしか無いのでそれを借りる際にも多少の話し合いが必要となるだろう。

以上のことをよく考えて決めて欲しい。

寝台列車(モスクワ→ワルシャワ)

ロシアはモスクワから、ポーランドのワルシャワまでの移動手段ももちろん夜行列車だ。

ここはPOLRAILというポーランド国鉄の予約サイトからやるわけなのですが、肝心のこのサイトがあのJRよりも遥かに使いづらい。

一昔前の形式っぽいポールレールの予約サイト。これが国鉄というのだから驚きだ。

かろうじて英語対応しているのは良いが、どんなサーバーを経由しているのか知らないがこんな軽そうな見た目とは裏腹になかなか繋がらない。繋がってひーこら予約を完了したかと思いきや、クレジットカード決済もまたなかなかうまく行かないというように、あまりにもストレスが溜まるのである。

近代的な室内

予約サイトの酷さとは裏腹にモスクワ駅に滑り込んできたPOLRAILの室内はかなり近代的で広く、シベリア鉄道よりも高ランクでずっと乗っていたいような快適さがある。

キキの旅行社のこのページを見ている人の中には”ベラルーシ”の状況が気になってやってきた人もいるかもしれない。
実は、モスクワからワルシャワに行くまでの間にベラルーシという国を通るのだが、これが曲者で一時期ニュースを賑わわせた「欧州最後の独裁国家」なのだ。
様々なサイト曰く「外国人はロシアから陸路(この鉄道)でベラルーシを通過することは出来ない」としているところもあり、実際に通れなかったという人もいるらしい。
しかしながら、僕たちが2020年3月に利用したところ、しっかりとベラルーシ通過ビザをパスポートに添付して見せたところ咎められることはなかったため、場合によるのだろう。

実際に出かける時点の情報を十分に収集した上で、更に代替案も考慮してベラルーシを通過いただきたい。(我々はモスクワから空路でワルシャワに行くこともBプランとして用意していた)

寝台列車(ワルシャワ→ウィーン→ミラノ)

次はEU圏に入って、ワルシャワからオーストリアのウィーン、そこからイタリアのミラノまでの2本の寝台列車の予約方法をご紹介しよう。

その時に利用するのがオーストリア連邦鉄道(ÖBB)である。

ちょっと無骨なデザイン

と言っても、このサイトで予約するのは全く難しくないのであまり語ることはない。むしろ今後の記事を見てもらえば分かるが諸事情によりÖBBにいい印象を持っていないのであまり褒めないでおこうっと。

国際列車(ミラノ→マルセイユ)

イタリアのミラノからフランスのマルセイユまではまた国が変わるので予約する国鉄も変わってくる。しかも、今回は寝台列車じゃなくて初の単なる国際列車。まあ予約する方法はあまり変わらないが。

予約サイトはThello。ここもなかなかに重いがそれほど難しくないので頑張ってみましょう。

国際列車(マルセイユ→バルセロナ)

スペインのバルセロナまでも単なる国際列車だ。サイトはフランス国鉄SNCFなのだが、

SNCFのトップページ

ご覧の通り非常にスッキリとした仕上がりとなっていて逆にUIがわかりづらく、予約が難しい。
言語も英語・フランス語・ドイツ語が選択できるが、そこは無難に英語を選んでおこう。

国内列車・夜行列車(バルセロナ→マドリッド→リスボン)

この度最後の鉄道は、スペインのバルセロナ-マドリッド間の国内列車と、マドリッドからポルトガルのリスボンまでの夜行列車である。

renfeの言語選択画面

予約サイトはスペイン国鉄(renfe)となるが、ここも同様に多少使いづらいUIをしている。
特に言語選択の画面(↑)が厄介だ。優秀な読者様がスペイン語を話せるのであれば問題ないが、もし英語を選択したい場合には Ingles を押せば無事に英語に画面が切り替わる。

こういう言語選択って、普通、選択先の言語で表示されない? 英語のサイトでも日本語切り替えはJapaneseじゃなくて”日本語”ってなってたり。
ここもInglesなんてパット見わけわからん言語じゃなくてEnglishってしておいてくれよ〜。

宿の予約方法

正直、宿の予約に関してはあまり言うことはない。

国内旅行であれば、各宿の公式サイトやじゃらん、楽天、ゆこゆこなんかが僕としては候補に上がるのだが、海外の宿を探す場合はBooking.comが基本となるだろう。

まず、宿独自のサイトから予約するのは却下だ。今回宿泊するような安宿はそういうサイトがない可能性も高く、よしんばあったとしても日本語はもちろん英語に対応していないことすらあるかもしれない。

そういったことを排除すべくBooking.comでの予約をオススメする。同行したコミ君がBooking.comのカードを所持するほどの会員で、お安く泊まれたのでそういう側面もあるが。。。

宿を比較する際には、日本人のコメントが非常に信用できるので是非チェックしよう。もちろん、海外の人でも嘘偽りなく答えている人も多いとは思われるが、根本的な価値観や考え方の違いから日本人の感性と合わないことも考慮しておこう。

【準備編】に続く↓

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